宗教曲をアカペラで歌うと言ったら、みんな笑った。でも、五重唱が始まると・・・!
私はこの演奏会が、間違いなく
ドラマチックなものになるだろうと思っていました。
友人たちの予想に反して、
私は自信満々にステージに向かいました。
「へえー、結構サマになっているじゃないか。」
「馬子にも衣装か?」
誰かが、くすくす笑っています。
「彼は本当に歌えると思う?」
「ありえないよ!」
「アカペラって大変だぜ。」
「他のパートに気を取られると、
自分の音が分からなくなるし、
油断すると、
どこを歌っているのかわからなくなる。」
「それにテナーが2つに分かれて、
あいつはセカンドテナーだろ?」
「ムリムリムリ、絶対無理 !」
「どうせ、頭が真っ白になって、
口パクでもするのが関の山さ」
「いやいや、オレは歌えると思うよ!」
誰かが返すと、周りから、
どっと笑いが起きました。
指揮者が登壇し、
『ジェズアルド 五声のための宗教曲』
が始まりました。
私は、セカンドテナーを歌いはじめました。
不思議なことがおきました。
魔法にかけられたみたいに、
みんな黙り込んだのです。
次第に、聴いている人たちから
驚きのため息が聞こえてきます。
友人たちは、目を丸くしています。
私は見られていることも忘れ、
夢中になって歌っていきました。
今いる時間も、場所も、どんどん小さくなり、
そこは、中世のイタリアの教会。
ソプラノが、
バスが、
アルトが、
トップテナーが
歌っています。
遠くにいるような、近くにいるような・・・
いつの間にか、3曲が終わり、
現実の世界に戻っていました。
会場は、大きな拍手に包まれています。
友人たちも興奮して、立ち上がり、
長い間、拍手を送っています。
「どうしたんだよ?」
「すごいじゃないか!」
「いつの間に練習してたんだよ?」
・・・それは秘密にしておくよ。
もうすぐ、
スターバト・マーテルが始まるから、
楽しんでいってくれよ。
・
これは夢なのか???
・
是非、ご自身で確かめにお越しください。
7月31日 (日) 12:45開場
タワーホール船堀 大ホール
やまおか きよし
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